メンタル・ヘルス研究所社会経済生産性本部

健康日本21 各論3.休養・こころの健康づくり

3.現状と目標

(1)こころの健康を保つ生活

ア 休養
「休養」は疲労やストレスと関連があり、2つの側面がある。1つは「休む」こと、つまり仕事や活動によって生じた心身の疲労を回復し、元の活力ある状態にもどすという側面であり、2つ目は「養う」こと、つまり明日に向かっての鋭気を養い、身体的、精神的、社会的な健康能力を高めるという側面である。
このような「休養」を達成するためにはまず「時間」を確保することが必要で、特に、長い休暇を積極的に取ることが目標となる。しかし、このような休養の時間を取っても、単にごろ寝をして過ごすだけでは真の「休養」とはならず、リラックスしたり、自分を見つめたりする時間を1日の中につくること、趣味やスポーツ、ボランティア活動などで週休を積極的に過ごすこと、長い休暇を利用して家族の関係や心身を調整し、将来への準備をすることなどが真の休養につながる。休養におけるこのような活動が健康につながる種々の環境や状況、条件を整えることとなっていくことから、今日の健康ばかりでなく、明日の健康を考えていくところに「休養」の意義付けをし、「積極的休養」の考え方を広く普及することが重要である。

イ ストレスへの対応
個人を取り巻く外界が変化すると、それまでと違ったやり方で新たに対応することが要求される。このような外界の変化はストレスと呼ばれ、さまざまな面で変動の多い現代は、ストレスの多い時代であるといえる。外界に起きた変化に適応しようとして内部にストレス反応とよばれる緊張状態が誘起される。これは、誰にでも起こることであり、いろいろな障害から身を守るなど、課題に挑戦する際に必要な反応である。ストレスの影響を強く受けるかどうかには個人差があるが、過度のストレスが続くと、精神的な健康や身体的な健康に影響を及ぼすことになる。
「平成8年度健康づくりに関する意識調査」1)によると、「調査前1ヶ月間にストレスを感じた人」の割合は、対象者の54.6%であり、ストレスを感じる対象としては、男性では、「仕事」があげられ、女性では仕事と共に、出産・育児があげられており、男女とも加齢とともに健康についての悩みが増加している。
このデータは、ストレスの多い状況を反映していると考えられ、心身の健康を増進するためにも、さまざまな方向からの対策を行って、ストレスを経験する割合を低下させることが目標となる。
このことから、職場や地域社会などのサポート体制を拡充するなど個人を支える社会的環境を整えることにより、2010年までに「最近1ヶ月間にストレスを感じた人」の割合を1割以上減少させることを目標とする。

○ストレスの低減
・「最近1ヶ月間にストレスを感じた人」の割合の減少  
目標値: 1割以上の減少
基準値: 54.6%
(平成8年度 健康づくりに関する意識調査(財)健康・体力づくり事業財団)

ウ 睡眠への対応
睡眠不足は、疲労感をもたらし、情緒を不安定にし、適切な判断力を鈍らせるなど、生活の質に大きく影響する。また、こころの病気の一症状として現れることが多いことにも注意が必要である。近年では睡眠障害は高血圧や糖尿病の悪化要因として注目されているとともに、事故の背景に睡眠不足があることが多いことなどから社会的問題としても認識されてきている。
わが国では、成人の23.1%に睡眠に関連した健康問題があり、14.1%が眠りを助けるために睡眠薬やアルコールを飲むことがあると示されている。1)
睡眠については、不眠を訴える人の数を減らし、睡眠薬などの助けなしでもよく眠れる人を増やすことが目標となる。
このことから、2010年までに「睡眠によって休養が十分にとれていない人」の割合を1割以上減少させるとともに、「眠りを助けるために睡眠補助品(睡眠薬・精神安定剤)やアルコールを使うことのある人」の割合を1割以上減少させることを目標とする。

○睡眠への対応
・「睡眠によって休養が十分にとれていない人」の割合の減少
目標値: 1割以上の減少
基準値: 23.1%
(平成8年度 健康づくりに関する意識調査(財)健康・体力づくり事業財団)

・「眠りを助けるために睡眠補助品(睡眠薬・精神安定剤)やアルコールを使うことのある人」の減少
目標値: 1割以上の減少
基準値: 14.1%
(平成8年度 健康づくりに関する意識調査(財)健康・体力づくり事業財団)

(2)こころの病気への対応

こころの病には精神分裂病、躁うつ病、人格障害、薬物依存、痴呆などさまざまなものがある。そのなかでも、現代のストレス社会ではうつ病が大きな問題になっている。世界の人口のうち3〜5%がうつ病であるとの報告もあり、うつ病は一般に考えられている以上に広く認められるこころの病である。
うつ病は、感情、意欲、思考、身体のさまざまな面に症状が現れる病気である。早期に発見されて、適切な治療を受ければ、大部分が改善する。
しかし、患者の多くは自分の状態をうつ病から生じている症状であるとは捉えることができず、うつ病の治療を受けていないのが現状である。
したがって、一般の人々や医療関係者がうつ病の症状や治療についての正しい知識を持つことが必要である。うつ病患者はまず一般診療科を受診する傾向があることから、一般診療科の医師は、うつ病を的確に診断し、治療に導入する役割を果たすことが重要である。
ところで最近のわが国の自殺者総数は24,000人から25,000人で推移していたが、1998年には一挙に31,000人を超えた2)。この数は交通事故死者数の約3倍にも上り、自殺予防は精神保健の最重要課題の一つである。
自殺はひとつの要因だけで生じるものではなく、多くの要因が絡み合って起こるが、特にうつ病は最も重要な要因であるといわれている。つまり、うつ病を早期に発見し、適切に治療することが自殺予防のひとつの大きな鍵になる。
このことから今回自殺が急増した原因を明確にし、それらを排除することにより従前の25,000人程度に戻すことはもとより、さらに適切な治療体制の整備等を図ることにより、22,000人以下に減少することを目標とすべきである。

○自殺者の動向
・うつ病等に対する適切な治療体制の整備等を図り、自殺者を減少させる。
目標値:22,000人以下
基準値:31,755人 (平成10年 厚生省人口動態統計)

目標値のまとめ

1. ストレス
・「最近1ヶ月間にストレスを感じた人」の割合の減少
目標値: 1割以上の減少
基準値: 54.6%
(平成8年度 健康づくりに関する意識調査(財)健康・体力づくり事業財団)

2. 睡眠
・「睡眠によって休養が十分にとれていない人」の割合の減少
目標値: 1割以上の減少
基準値: 23.1%
(平成8年度 健康づくりに関する意識調査(財)健康・体力づくり事業財団)

・「眠りを助けるために睡眠補助品(睡眠薬・精神安定剤)やアルコールを使うことのある人」の減少
目標値: 1割以上の減少
基準値: 14.1%
(平成8年度 健康づくりに関する意識調査(財)健康・体力づくり事業財団)

3. 自殺者の減少
目標値:22,000人以下
基準値:31,755人 (平成10年 厚生省人口動態統計)