メンタル・ヘルス研究所社会経済生産性本部

過重労働・メンタルヘルス対策の在り方に係る検討会報告書(抜粋)

4 取り組むべき対策の方向(続き)

(3)体制の整備
ア 事業場内の体制整備
○ 過重労働対策及びメンタルヘルス対策については、医学的知識を基礎とした健康管理がこれらの対策の軸となるものであり、産業医等の医師の積極的な関与が重要である。特に、メンタルヘルス対策については、事業場外の機関を利用している場合はその機関を含めたネットワークを作り、産業医に関連情報が集まるようにし、産業医が指導的に取り組む体制が不可欠である。

○ 産業医にはその責務について認識し、積極的に取組むことが求められ、他方、事業場には産業医がその職務を適切に遂行できるような体制や環境を整えることが求められる。

○ 専属産業医を選任していない事業場では、産業医等の医師の指揮を受けつつ、円滑に対策が進められるよう衛生管理者、衛生推進者、保健師等といった産業保健スタッフをその役割や専門性に応じて活用することが重要である。

○ 過重労働対策及びメンタルヘルス対策をはじめとした健康管理対策がより適切に行われるよう、事業場における産業保健スタッフの体制の整備、スタッフの資質の向上、情報提供の充実等により産業保健活動の充実を図ることが不可欠である。

○ 過重労働対策及びメンタルヘルス対策を進める上では、労働時間管理、就業場所や作業の転換など、人事労務管理面からの措置が不可欠となる。このため、産業保健スタッフと人事労務部門との連携が重要であり、相互に協力して必要な措置を実施していく必要がある。これを進める上で、人事労務部門の者への知識等の付与が重要である。

○ さらに、過重労働対策、メンタルヘルス対策とも、労働者自身の意識、個人の要因に関わる部門も少なくなく、対策を事業場において効果的に実施するためには、労働者の意見が反映されるよう労使、産業医、衛生管理者等で構成される衛生委員会等の場を活用することが重要である。衛生委員会の設置義務のない小規模事業場においても、これら対策の実施に係る検討を行うにあたり、労働者の意見が反映されるようにすることが必要である。

イ 事業場外の機関の活用
○ 過重労働対策及びメンタルヘルス対策については、産業医等の医師の積極的な関与が重要であることは前述したが、産業医の選任義務のない小規模事業場においては、地域産業保健センターを活用することのほか、「会社のかかりつけ医」といった医師を事業場外に持つことも有効と考えられる。

○ メンタルヘルス対策について、産業医は必ずしも精神医療に精通しているとはいえないことから、必要に応じ、産業医が精神科医等の支援を受け、あるいは労働者が直接精神科医等の助言を受けられるような体制を整備することが望まれる。このためにも、産業保健について理解した専門精神科医等の育成が望まれる。

○ メンタルヘルスについて利用できる事業場外の機関には、産業保健推進センターや地域産業保健センター、精神保健福祉センターなど公的機関から外部の医療機関やメンタルヘルスサービスを提供する民間機関(Employee Assistance Program:EAP)まで様々な機関があり、事業場が抱える問題、事業者が求めるサービスに応じた機関の活用が重要である。利用に当たっては、事業場外機関が提供するサービスが事業場にとって実効あるものとなるよう事業場内のメンタルヘルスを担当する者を配置する等により事業場外の機関と円滑な連携を図るなど留意が必要である。さらに、家族を通じた支援策として、地域と職域が連携して、メンタルヘルスの不調に気付いた家族を対象として意見交換や交流、相談を行うことができる場をつくることが必要である。

ウ 国の支援措置
○ 国は、事業場における過重労働対策、メンタルヘルス対策の円滑かつ効果的な実施を支援するため、事業場、労働者に対する周知啓発、具体的な実施手法の検討・提示、事例の紹介、関係情報の提供等を適宜適切に行っていくことが求められる。特に、中小規模事業場に対しては、実践的、具体的な手法を示し、必要な支援・指導を行うなど対策の普及に努める必要がある。

○ また、事業場内の体制整備を進めるため、事業場内での教育研修の実施や事業場での対策立案等を担当する産業保健スタッフ等の育成に対する支援が必要である。

○ さらに、今後、過重労働対策及びメンタルヘルス対策を推進する上で、産業医等の専門的役割がこれまで以上に重要となることから、産業医等に対して、面接指導の方法、メンタルヘルスに関する知識等を付与するための支援が必要である。また、職場におけるメンタルヘルス対策の充実強化を図るため、広く精神科医等に対し産業保健に関する知識を付与するよう支援するとともに、事業場の求めに応じ適切な精神科医等を紹介できるようにするようなことが必要である。

○ 国が過重労働対策及びメンタルヘルス対策を推進するにあたって、事業場における医学的知識を基礎とした健康管理が対策の軸となるものであり、産業医の選任義務のない小規模事業場では対策の実施が困難となることが懸念される。このため、小規模事業場に対して産業保健サービスの提供を実施している地域産業保健センターの活動の充実を図ることが必要である。