メンタル・ヘルス研究所社会経済生産性本部

役職とメンタルヘルス

〜管理職層と一般職層とでどのような違いがあるか〜

メンタル・ヘルス研究所 小林 建一

役職位によってメンタルヘルスに相違がある

組織における役職は、多くの企業では「部長」「課長」「係長」「一般」などと一般的に呼ばれている。メンタルヘルスの側面からこれら役職集団を分析してみるとある傾向が見られる。
その特徴と理由について以下に述べる。
第一の特徴は、多くの場合、「一般」「係長」「課長」「部長」と階層が上位になるに従って心身の健康度、職場での適応状態、および性格・行動の前向きさなどが、より良好になっていくのであ る。すなわち、階層のトップに位置する「部長」集団のメンタルヘルスが最も良好である。
第二の特徴は、メンタルヘルスの違いは、階層に応じて段階的に変化していくが、「部長」「課長」などのいわゆる「(人事考課権を持つ)管理職」と、そうでない「係長」「一般」クラスなどの「一般職」との間には、より大きな格差が見られる。
上記の傾向を疑問に思われるかもしれない。それは例えば、上席の方は責任が重いのでストレスフルなのではないか、あるいはサンドイッチ症候群といわれるように、中間管理職と呼ばれる立場にある人は、上下間の板挟みでストレスフルになっているのではないか、との見方である。
ところが、JMIのこれまでのデータ(約240万人)が示すところによれば、前述のとおり役職が上位になるほどメンタルヘルスは良好になる。

管理職の健康度はなぜ高いのか

このことは、「業務の指示・命令権」や「業務の自由裁量権」(仕事のコントロール)があるかないか、これらの権利を相対的に多く与えられているのはどの役職かということと強く関係している。言い換えれば、指示をする立場の者よりは、指示を受けて実際に業務遂行を担う者の方がメンタルヘルスはより低位になるのである。
従って、管理職であっても、もし、経営者や上位の役職者から十分な裁量権を与えられていなければ、メンタルヘルスは一般職程度のものとなることが推測される。

管理職に望ましい性格・行動傾向とは

JMIの35評価尺度の中には、性格・行動領域の評価尺度の一部として『前うつ』と『自己顕示』が用意されている。
『前うつ』は、几帳面さ、真面目さ、辛抱強さを示し、『自己顕示』は、仕事への関わり姿勢としての積極性を示すものである。
この2尺度を、管理職層に当てはめて表現しなおしてみる。『前うつ』は、粘り強い目配り、仕事熱心で周りへの気配りがあり、『自己顕示』は、自分がやらずに誰がやるのかというような強いリーダーシップを示している。
この2尺度が高位(得点)にあるほど、組織や職場における改善点や職場のいつもとは違う変化、などをよく見ている事を示す。そして、改善点を見つけた場合には、自らが先頭に立って改善行動をとるのである。
従って、管理職と呼ばれる集団にとって、この2尺度は特に高位にあることが求められるのである。いわば、管理職を特徴付ける尺度である。

『上司との関係』の良し悪しと職場の風通し

指導・育成の観点からの支援・サポートが重要
JMIの組織分析において、職場領域の評価尺度に含まれる『上司との関係』を役職集団別に対比して見ると、役職の上下における、トップ・ダウンの諸情報の伝達、指示・命令、更には支援・支持が円滑に行われているか推察することができる。
業務遂行においては、組織を構成する全ての者が、組織の方針・戦略と部門目標を共有し、各人の役割と責任をそれぞれの役職に応じて理解していることが重要である。
組織分析で、『上司との関係』が疎遠であると感じている役職層(例えば、課長層)があると、その役職層を含めて、それより下位の役職層(例えば、係長層)には、組織の方針・戦略などの情報が十分に伝わらず、組織の方針・戦略、部門目標、および役割・責任などが不明確な状況の中で、業務遂行が行われる。そして、業務遂行に際しては、十分な支援・サポートも得られにくい可能性が高い。言い換えれば、風通しの悪い組織・職場ということになる。
このような職場の状況では、コミュニケーションや支援の不足から、業務遂行における不確実性や複雑性が生じてしまい、組織の生産性の低下とともに社員のメンタルヘルスに悪い影響を与えることになる。これは組織運営面で不健康要因を抱えた状況といえよう。
以上の点は、管理職は上位職とのコミュニケーションを良くすると共に、下位職とのコミュニケーションにも配慮することが重要であることを物語っている。