メンタル・ヘルス研究所社会経済生産性本部

JMIこころの健康調査・相談室レポート

(財)社会経済生産性本部
メンタル・ヘルス研究所

2000年度の相談傾向

メンタル・ヘルス研究所では「心の健康相談室」利用者の相談内容を6つに分類しその傾向を把握しています。相談する方の訴えは必ずしもこちらが設定した分類内容に収まりきるというものではありませんが、その中心となる訴えの内容を『図1』のようにまとめております。参考としてご活用下さい。

図
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相談内容の変化

職場・仕事に関する問題

職場における人間関係、仕事そのもののこと、その他職場環境の問題などがここに当てはまります。このところ過去3年間は、98年度の18.2ポイントから、今年度の25.6ポイントまで増え続けています。しかし過去と比較すると4,5年前(96,97年度)の水準に戻りつつあるととらえることもできます。
各企業組織の環境変化への対応が働く人にストレスを与えている様子が浮かび上がっています。内容としては、特に人事異動にからむ相談が増えています。相談員の中には「男性について言えば、ひ弱になった」というような見方と、「企業を取り巻く環境が厳しさを増し、それが個人にストレスとして影を落としている。人間の適応力が落ちているのではない」という両面の見方があります。

家庭に関する問題

「家庭に関する問題」は、夫婦や親子の関係、教育・しつけ、他にも配偶者の不倫、老親の介護などが分類されています。このところの傾向として家庭の問題が増加すると思われましたが、昨年度比で3.9ポイント低下し、3年ぶりに「家庭に関する問題」の比率が「職場・仕事に関する問題」よりも少なくなりました。「家庭に関する問題」は90年代に増加傾向をたどり(95年度の20.0ポイントは阪神淡路大震災の影響と考えられている)、99年度に26.3ポイントまできましたが、今回は22.4ポイントに減少しました。

精神医学上の問題

ここに分類されたものがかならずしも病気ということではありません。極端な症状をもっていなくても精神医学的なアプローチが必要なものをここに分類しています。ですからここの比率が精神病患者の比率を示すものではありません。「精神医学上の問題」は比率としては少なくなってきています。昨年度(99年度)の31.3ポイントから、26.0ポイントに5.3ポイント低下しています。
ここに分類されるケースの多くは精神医学上の問題単独で分類されることはなく他の症状との組み合わせになっています。精神医学上の問題を抱えた人は、職場や家庭などの環境適応も難しいし、また身体に症状があらわれることもあります。
また「精神医学上の問題」と分類された方の症状によっては相談を聞くことよりも薬を用いて治療するほうが効果を期待できると判断されるときがあります。その場合は、信頼できる医療機関を紹介しています。
環境要因の「職場・仕事に関する問題」「家庭に関する問題」が多く、「精神医学上の問題」が少なくなってきているのは、視点を変えると「心の病」に対する正しい理解が浸透した結果だとみることも可能です。心の問題の医療機関が増え、マスコミなどでも正しい知識を提供することで、症状が重くなる前に、相談しているとも理解できます。

性格上の問題

「性格上の問題」というのは、病気ではないけれども、本人の性格的な問題が生活の中での不具合を生じているときにここに分類します。たとえば、性格的に対人関係が苦手で、職場でも家庭でもどこにいっても人間関係がうまくいかないといったようなケースはここに分類しています。この比率は98年度には一時的に増えていますが、99年度から2000年度にかけて、8.2ポイントから5.8ポイントに減少しています。

身体医学上の問題

身体的不調感や、心の問題と関係してそれが身体的な症状にあらわれる心身症、慢性疾患などの相談がここに入ります。「身体医学上の問題」は昨年度(99年度)の6.1ポイントから、6.4ポイントに0.3ポイント上昇しています。
メンタル・ヘルスの相談において「身体医学上の問題」というのは一見異質のようですが、実はメンタル・ヘルスの相談をするための糸口として重要な手がかりになります。ストレス反応が身体化して「心身症」になるケース、「うつ病」に伴い身体症状に出るケースなど、人によってストレスのあらわれ方はさまざまです。体がだるいとか、何となく不調感を持っているのに健康診断では異常が出ない、といったことは多くの人が体験しています。それを考えると身体症状の悩みでも、まず「心の健康相談室」へ気軽に相談していただくことをお勧めします。
また過去にあった事例として、JMI健康調査の結果において消化器系の不調感が強く出ていたという方がいらっしゃいました。本人には自覚症状が特になかったのですが、とりあえずということで面接相談を利用してみると、胃潰瘍の可能性が判明し、紹介先の病院で検査し緊急入院したというようなケースもありました。そのように@JMI健康調査で得られた結果と、A自分で感じている健康状態、それとB「心の健康相談室」による専門家のアドバイスをうまく活用していただくことで心身の健康管理が数段レベルアップします。

そ の 他

それ以外の相談は「その他」としてまとめられています。今年度になって昨年度の7.4ポイントから、13.8ポイントに件数は増えています。内容としては@医療機関紹介AJMI健康調査の内容についてB恋愛問題C本人以外の家族からの相談(上記に分類できない家族個人の悩み)などです。数の上では増えていますが、内容について目立った特徴があるというわけではありません。

先にふれたとおり相談内容はこれら6つの項目にきれいに分けられるというものではなく、実際にはいくつも重なり合っているのが実態です。たとえば、職場に行こうとする(「職場・仕事に関する問題」)と下痢が始まる(身体医学上の問題)とか、不安になる(「精神医学上の問題」)と眠れなくなる(身体医学上の問題)とか、家でも(「家庭に関する問題」)、職場でも(「職場・仕事に関する問題」)すぐもめ事を起こす(「性格上の問題」)とか、人によりさまざまなケースがあります。対応する相談員はこの道のプロフェッショナルですから、それらを冷静に見極め対処するようになります。その際にもっともメインの内容と位置づけた結果がこの『図1』ということになります。
また、最近の傾向として、今は随分少なくなってきていますが、いっとき、自分の名前を告げない相談の多いときがありました。これをどうみるかも課題です。特に公務員の方々に匿名が多かったという事実がありました。プライバシーへのこだわりといえばそれで済まされそうですが、ここには大きな誤解があります。「プライバシーを守る」というのは、相談員に自分の名前を告げないことではありません。相談を受けた相談員がそのことを第三者に話さないことをさしています。相談者の名前は勿論、具体的な相談内容の公表も一切伏しておりますので、相談員に自分自身の名を名乗り、その上で心の内面を明け渡すということが大切なポイントであることをご理解願います。
「心の健康相談室」はJMI健康調査を受診してから2年間は無料で何度でも利用することができます。相談室を利用される方々に正しい有効な利用法を知っていただくためには、それらの情報をメンタル・ヘルスの基礎知識とともに、健康管理部門や労組、健保等から社内報や広報誌、社内メールなどを通じて常にPRしていただくことが大切です。それがあるかないかでも相談室の利用件数は、大きく変わってきます。
メンタル・ヘルス研究所でも、個人結果報告をお送りしてから、6ヶ月後、12ヶ月後、18ヶ月後には、PRのためのチラシを各企業・団体のご担当者宛にお届けしていますのでご活用ください。

JMI健康調査におけるアドバイス率の変化

JMI健康調査2000年度のアドバイス率が算出できましたのでここに報告します(『図2』)。アドバイス率とは、JMI健康調査において個人結果の中で精神的な不調感が強いということで専門家に相談することをお勧めするアドバイスを差し上げた方の比率です。もちろん精神的な病気ということではありません。自分ひとりで今の状態を変えることは難しいと判断された方たちです。

図
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2000年度のアドバイス率は11.18%。昨年(11.09%)よりも0.09ポイント上昇しました。98年からは2年連続で上昇しています。

メンタル・ヘルス研究所は「心の健康相談室」はもとよりさまざまな活動をとおし、皆様のメンタル・ヘルスの向上をともに考えていきたいと願っています。これからもよろしくお願いいたします。